1974年。
小島は焦っていた。
明らかに不審な点の多すぎる事故。
事件性を疑わざるを得ない事故。
なのに小島の捜査はストップがかかる。
現場の人間には知る由もない上層部の深謀遠慮がどうやら働いているらしい。
だけど、小島にとってそんなことはどうでもよかった。
理想の刑事に少しでも近づきたい。
空回りする使命感。
小島はまだ、破滅の時がすぐそこに来ているのを気付かないでいた。
30年という1世代を挟んだ2人の男。
決して交わり合うことがない2人の時代が、
タイムカプセルが開かれたとき、うっすらと微妙に重なり合う。
仮にそうして浮かび上がったものが、絶望、挫折、虚無、諦観だったとしても、
誰かは知っているはずなんだ。
こんな時代でも、いつか「良かった」と振り返る時がやって来ると。